楽器屋に行けば、新品でも6,000円でお釣りが来る。 中古なら3,000円台でワゴンに放り込まれている、鮮やかなオレンジ色の箱。 BOSS DS-1 Distortionです。

「安すぎるし、初心者が最初に買う『おもちゃ』でしょ?」 「ハイエンドなブティックペダルに比べたら、音はペラペラなんじゃない?」
もしそう思ってスルーしているなら、あなたは「ロックの歴史」そのものをスルーしているのと同じです。 カート・コバーン(Nirvana)、ジョン・フルシアンテ(Red Hot Chili Peppers)、スティーヴ・ヴァイ。 彼らがなぜ、何十万円もの機材を買える財力を持ちながら、この「安い箱」を踏み続けたのか?
今回は、誤解されがちなDS-1の真の実力と、9割の人がやらかしている「間違ったセッティング」について解説します。
1.「ディストーション」だと思うな、「DS-1」という楽器だ
DS-1を評価する時、現代のモダンなハイゲイン・ディストーションと比較してはいけません。 ズンズン響く重低音? ありません。 きめ細やかでシルキーな歪み? ありません。
- 粗くて、暴れる
- ジャリッとした高域
- 低域が削れてスッキリする
この「粗さ」こそがDS-1の正体です。 綺麗に整えられた優等生な音ではなく、ガレージバンドのような「初期衝動」の音がします。 だからこそ、グランジやパンク、オルタナティブ・ロックとの相性が異常に良いのです。
「音が悪い」のではなく、「行儀が悪い音」が出る。そこを愛せるかどうかが全てです。
2.初心者が陥る「蚊の羽音」トラップ
DS-1を買った初心者の多くが、メルカリに出品する時の理由。 「音が細い」「キンキンして耳が痛い」。
これは断言しますが、ペダルが悪いのではなく、TONEの回しすぎです。
DS-1のTONEは「時計」じゃない。「フィルター」だと思え!
DS-1のTONEツマミは非常に効きが強烈です。 12時(真ん中)にすると、ハイが強調されすぎて「ジリジリ」「シャリシャリ」という、いわゆる「蚊の羽音」のようなサウンドになります。
プロのセッティングを見てください。 TONEは「10時以下」が基本です。 思い切って9時〜10時あたりまで絞ってみてください。急に音が太くなり、「あのCDで聴いたロックサウンド」に変貌します。
3.JC-120(ジャズコ)との付き合い方
日本のスタジオ定番アンプ「JC-120」とDS-1は、実は「混ぜるな危険」の組み合わせと言われることがあります。 JC-120の硬いクリーンに、DS-1の鋭いハイが合わさると、耳をつんざく音になりがちだからです。
では、どうすればいいか?
特に「SD-1(黄色)」+「DS-1(オレンジ)」のBOSS兄弟繋ぎは、往年のロックギタリストが愛した黄金の組み合わせです。
4.なぜ「中古」でDS-1を買うべきなのか
当店のような中古ショップにとって、DS-1は「常連さん」です。 流通量が半端ではないため、状態の良い個体が安く手に入ります。
さらに、DS-1は「世界で一番改造(モディファイ)されているペダル」でもあります。 回路がシンプルで情報も多いため、「ハンダごてを持って、自分好みの音に改造する」という大人の遊びの入門機としても最適です。
まずはノーマルの中古を3,000円〜4,000円で手に入れる。 使い倒して、飽きたら改造してみる。 こんな楽しみ方ができるのも、安くてタフなDS-1ならではです。
まとめ:1周回って「オレンジ」に戻ってくる
高いブティックペダルを買いあさり、理想の歪みを求めて旅をしたギタリストが、最後に戻ってくる場所。 それがDS-1だったりします。
「ジャーン!」とコードを弾いただけで、スイッチが入る音。 理屈じゃなく、感情に訴えかけてくるあの歪みは、5,000円のこの箱にしか出せません。
食わず嫌いしていたあなたも、TONEを10時にして、もう一度踏んでみませんか? そこには、あなたの知らなかった「伝説」が鳴っているはずです。



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